ボスは迷文家シリーズ

シアトルの日本食レストランあれこれ


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シアトルにシローズという寿司屋があります。とても良い店です。以前は頻繁に行きました が最近では減りました。以前は、シアトルのダウンタウンには、寿司が美味しい店がシロ ーズ以外になかったのですが、藤寿司ができてからシローズには足が向かなくなったので す。シローズはとても好きなのですが、駐車が難しい上、店に入っても寿司カウンターはい つも満席で座れないからです。その点、藤は駐車の問題はなく、寿司も美味しくて値段も低 め、そして店の奥さんも美人でフレンドリー。更には、フリーウエーからのアクセスもいいの です。こんないい条件がそろっていたら、いくらシローズが良い店であっても、足は遠のい てしまいます。このシローズに行くと、隣で天気予報のオジサンが寿司をつまんでいたり、 ニュースキャスターたちが一緒に食事をしていたりするところにぶつかることが多いのです が、最近ではイチローが行くようになったそうです。そうなると今まで以上に混んでしまうで しょう。佐々木は、怪しげな雰囲気の店ばかりです。シアトル宇和島屋となりにあるFortSt Georgeとベルビューダウンタウンのママさんです。


FortSt.Georgeは、当地唯一の日本人スナック。この店には、留学できて目的意識なく くすぶっている流学生や、流れ流れている男と女、そしてレストランで働く連中が仕事の 帰りに一杯飲みに来る店。客質からしてタバコの煙が充満している店でもあります。昨 年の佐々木はそんなお店の定連でした。当地唯一の日本人バーという条件だから、佐 々木はこの店に入りびたっていたようです。昨年は家族も日本で彼はこちらで一人だっ たということもあったのでしょうが、彼にとってこの店が嬉しいことは、夜な夜なやってっく る怪しげなオンナたち。彼女等を誘いだして毎晩トッカエヒッカエやりまくっておりました。 レストランの職人たちがその現場を見ていて、僕が彼らの店に寿司を食べに行くと、誰 でも口を揃えて佐々木のプレイボーイぶりを話してくれました。今年の佐々木はベルビュ ー中心地にコンドを買って奥さんも来ているので、もうFortSt.George通いは少なくなった と思うのですが、彼の住まいから歩いて行ける距離に、「ママさん」というこれまた怪しげ な雰囲気の店ができたので、今ではそこの定連になっているようです。

ここのママさんとは、昔むかしのそのまた昔の東京でモデルをやっていらした゛過去美しか った"女性です。その後、北の新地でナイトクラブのママさんをなさっておられ、流れ流れて 20年程前にシアトル南の港町タコマで日本レストランをはじめたという経歴の持主です。シ アトルには日本レストランの数が多すぎるのですが、タコマには当時一軒かそこらの数でし かない中のお店だったのです。望郷の果てに住む日本人を相手にした食堂という雰囲気の 店であったのに違いありません。しかし、タコマ周辺に住む日系人や駐在員たちには有り難 いお店であったことでしょう。

東京でモデル、そして北の新地でナイトクラブのママさんをやっておられたママさんは、ド田舎 のタコマで骨を埋める気持ちはありませんでした。シアトルに、それも高級なベルビューに移る。 それがママさんの長い間の夢だったのです。その為に、タコマでは耐えに耐え抜いて資金を貯 めて、ベルビュー進出をアタマに描いて頑張っておりました。オンナ手ひとつで頑張ったのです。

ママさんの夢は一年ほど前に叶いました。ベルビューに進出。それもダウンタウンの中心地に オープン。北の新地でママさんをやったというのは凄い実績なのでしょうか、店の名前もママ さんです。僕がママさんに行った晩は開店して一週間目でした。客は僕のほかには誰もいなく て中はガラガラ。寿司のネタ箱にはサーモンとタコくらいしかなく、板場のオヤジが言い分けば かりと言っていたくらいでした。すし屋がマグロをきらしたらすし屋ではない、寿司職人ならば誰 でもそう思うのでしょう。言い訳はマグロさえ置いてない寿司屋の心意気を崩すものでしかなか たと思います。

寿司カウンターに座った僕は赤ワインを頼みました。そうしたら何と何と甘くて飲めない代物でし た。僕はボトルをみせてくれと頼みました。そうしたら、マタマタ何と何と、パーティー用の超安物 パーティーワインの紙箱をみせるではないですか。1ガロン10ドルのものです。僕はビックリたま げてイスからずり落ちそうになりました。この時に受けたショックは大きいもので、これはトラウマ となって今でも引きずって生きております。結果、この店の近くは通ることもできなっくなってしま いました。

これが北の新地でママさんをやっていた後でひなびたタコマで日本食堂をやっていた女性のスタ イルでした。タコマでは許される箱詰めワインも、ベルビュー人が相手では無理でしょう。開店後 すでに一年になるので、今では赤ワインとの注文が入ったら、キャバネー、バーガンディー、メル ローと取り揃えておりますが?と客の嗜好を聞き返すようになってきていると希望的に思ってます。

僕が店に入った晩は他に客がいなかったので、ママさんは僕の横に座り、色々とお話をしてくださ いました。彼女が漂わせている妖艶な雰囲気は男を男にさせるものに違いありませんが、僕には 逆でした。ママさんが僕の横に座ったとたん、僕はある映画を思い出してしまったのです。それは 妖怪家族のアダムス・ファミリーという映画。ママさんが醸し出す雰囲気が、あの映画に出てくるお 母さんのそれと余りにも似すぎているのです。色香(フェロモン)を振りまきながらも、その目の奥に 潜める計算高を隠し切れていないのです。モデルからナイトクラブのママさん。そして望郷の果てで の日本食堂。夢を心にベルビュー進出を果たした。ママさんとはこんな凄腕なのであります。色香 を売り物にのし上がってきた根性も彼女の目に輝いておりました。

お店は新築なのに、内装はタコマを引きずっているように思われました。八代アキの「船歌」にあるよ うな、ヒナビタ港町、それも望郷の果てにあるヒナビた日本食堂というつくりでありました。遥か故郷を 思わざる日本人がぼつぼつと入ってきて、稲荷太巻き寿司セットだとか、春菊の代わりにブロッコリが 入った厚切りのスキヤキを喜んで食す雰囲気の店なのです。一年すぎた今ではどうなのかわかりませ んが、ベルビューですから東京からの駐在員も多く住んでいますので、メニューなどは既に変えられて いるかもしれません。何しろ、最近では佐々木がやってきて、奥さんと二人でカラオケで騒いでいるそう ですから、彼女にとっては、佐々木が出没するということで客も増えるでしょうし、極めてラッキーなロケ ーションとなったわけです。

この店は僕の家から車で10分ほどの距離なのですが、開店の時に行った時にママさんから感じとら れた雰囲気と箱詰めワインがトラウマとなって、僕の足は一度でとまってしまいました。しかし彼女は とても良い人でした。モデル時代のアルバムや雑誌広告だとか芸能人たちとともに写っている写真も みせてくれて、過去はイイ女だったんだなあと、僕は元いい女に横に座っていただけたことに感激して おりました。

しかし、赤ワインそれもメルロー好きの僕は、箱入りの甘いワインでショックを受けてしまったので、もう 駄目なのです。基本的に、日本レストランで美味しい赤ワインを求める方がまちがっているのでしょうね。 どこへ行ってもワインの美味しいものがないのです。そこへいくとアメリカンやイタリアンでは、安くても美味しいメルローを置いてます。反面、気のきいた日本レストランでは赤といえばキャバネーくらいなもの。メルローをおいてません。僕はあちこちの店でメルローを置けと頼んでおいてもらったのですが、寿司屋のオヤジがワインの味を知らないから、不味いメルローばかりを置くのです。安物の中に美味しいワインをみつけることがワイン通だと思っているのですが、ただ安いというだけでワインをお帰れてもアリガタ迷惑でしかありません。今のところ、不味いメルローよりも不味いキャバネーの方が美味しいので、最近の僕は不味いキャバネーを置いてある日本レストランに行くことが多くなりました。昨夜は寿司カウンターに座って、不味いキャバネーを美味しく飲みながら醤油ラーメンで一日が終わった次第です。

おのざわショージ
08/17/01

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