ボスは迷文家シリーズ |
トレールは無料のジム
事務所裏のトレールは無料のジムである。僕は敢えてこのロケーションを選んだのだが それには理由があった。愛犬Banditを走らせる為だった。愛犬Banditの里親になって、 トラック通勤をはじめるようになった為、自転車通勤をやめたからだ。事務所裏というロケ ―ションは何といったってゼロ・タイム・アクセスなので便利この上ない。ちょっとやそっと でサボルことをしない。遠くのジムだとつい億劫になってしまう人には理解してもらえるこ とだ。何しろ気が向いた時には何時でも使うことができるからだ。
Banditを伴ってのロード バイクライド
僕の一日は毎朝、ローラーブレードか自転車でBanditを走らせることからはじまる。そし て昼休み時のランチタイムライドと夕方のライドと使いたい放題の利用の仕方である。雨 の多い冬場は20Wのライトをつけて夏場と同じ距離を走る。ヘルメットライトをつけて夜 暗い中ローラーブレードをやったりもするので、一年中オープンで僕の体力維持に役立っ ているのである。
週一回のランチタイムライドは、全米選抜チームの女子選手のシャンと共にやっている、 というかツイこの間までやっていた。彼女は、二週間前にレース中の事故で小指を付け根 で骨折したので、8月にメキシコで開催されるワールドカップは断念した。しかし、来週から エアーされるグループヘルスのTVコマーシャルに起用されたので、マリナーズ・ゲームや オープラ・ウインプリー・ショーのコマーシャルで彼女の走りをみることができる。

ランチタイム・ライド シャン
ランチタイムライドは、僕の事務所のランドロードのボブと共に走ることもある。昼の一時 間に32km走ってくるのだ。夕方は5時になると、現在では実習生の麻衣子を伴って、月 水金と32キロのバイクライド、そして火木と16kmのローラーブレードだ。麻衣子は、この トレールを通じで留学生時代に触れたこともないシアトルを知ることとなった。僕は麻衣子 との伴走が終わった後で一人で再度走ることが多い。

ロード バイクに慣れてきた麻衣子
トレールは自然環境の中を走るので気分を爽快にさせてくれる。川は自然のまま。当地 では土手をコンクリートで固めるようなことはしない。土手は野草で覆われていて、花が 咲く時期にはあたり一面にクスンで地味なワイルドフラワーの甘い香りがかすかに漂っ ている。今の時期はブラックベリーの香りが強く甘い。麻衣子はブラックベリーがこのよう に生えていることを知らなかった。一度、自転車をとめてベリーを摘んで食べてからという もの、彼女はブラックベリー摘みに嵌ってしまったようだ。
トレールで走っていると、お馴染みさんと知り合うようになる。このトレールに面した僕の事 務所のあたりには多くの倉庫や事務所があるのだが、このトレールを積極的に利用してい る人は少ない。だからトレールで出会うお馴染みさんも限られてくる。僕は朝昼夕方と利用 率が高いので色々な顔と知り合いになった。早朝歩いている日系二世の人からは、収容所 経験のお話しをきくこともある。毎日夕方走っている赤毛の女の子はニコッと微笑んで何か 一言会話が始まる。その一時間あとになるとリトアニアからいじゅうしてきたロシア人オネー さんがローラーブレードをやっていて、方向が一緒の時には会話をしながら滑る。日本では 異業種交流だなんて会をやっているが、このトレールは異文化交流の場でもある。

事務所ネイバー 綾乃ちゃんと吉田君
トレールの南にはREI、ラレーがある。そこで働く自転車ツーキニストと出会うこともある。ボ ーイング宇宙防衛研究所もトレールに面していて、そこで働く科学者のデイブは時たま事務 所に立ち寄ってくれる。彼のバイク通勤の帰路に合わせて奥さんが自転車で彼の事務所の 近くまでいって、帰り道を共に走るのだ。奥さんは立ち寄ると決めた時には必ずBanditにお 菓子をもってきてくれる。先日も二人で立ち寄ってイタリア自転車旅行の計画を話してくれた。 9月に入ってから自転車でイタリアを縦断する予定だそうだ。奥さんもサイクリストなので、夫 婦で同じ趣味嗜好を持つことは夫婦円満の秘訣だなと思った。僕の家庭では、元ニョーボー は僕が入れ込むことの全てを嫌っていた。
何しろ運動はいい。先日、麻衣子のボーイフレンドが僕らの自転車ライドは部活のトレーニング のようですねと言っていたが、チンタラ気分で走ると思ったら大間違いなのだから、そうかもしれ ない。麻衣子は、東京生活だったら、我々が汗を流している時間帯はみんな飲み食いしている んでしょうねと言った。汗を流すのと飲み食いしているのでは健康的に正比例の動きなんだろう と思っている。僕も飲み食いはするが、運動をしてからのことだ。何しろ僕は運動が飲み食いと 同じくらい人間である為に必要だと思っているので、体を動かしてしまう。何しろ無料で使い放題 なんだから、使わなければ損だ。こんなジムの横に事務所を持つと、長い間の人生ではエラク得 をすることになるのだが、それはジム代が一ヶ月いくらで何年でイクラというものだけでなく、健康 という何にも変えがたい結果を得る事ができるのだから、こんなお得はない。人生はお金や出世 だけではない、生活圏を選んで、仕事以外のアメニティーを得る事も大切なのである。だから、ど んなにサラリーが上がろうと、ロサンジェルスあたりの会社から引っ張られてもそれを断る人たち が多くいる。そんな意味でも事務所裏にトレールを持つロケーションに勝る場所はないだろう。
おのざわショージ
08/13/01