ボスは迷文家シリーズ

カオルちゃんと四羽のカラス
本当にあった大人の童話


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カオルちゃんは、毎朝、最低でも10kmのサイクリングをしています。初めてから既に 3ヶ月にはなるでしょうか。今では、 「サイクリングを毎日やらないと体調が悪い]、と、爽快なサイクリングが歯磨きと同じような 日課にまでなってしまいました。ここまでくると、体力もつくし気持ちも明るくなる。 毎日のように力をつけていったカオルちゃんは、最近では登りだけでも40分はかかるコースを 走るまでに強くなったのですから凄いことです。

6月中旬には30kmライド初挑戦

そんな登りのコースを走るようになってしばらくしてからの出来事です。確か一週間前のことでしたが、 登り切ったところにカラスが四羽おりました。これはカオルちゃんとカラスとの 出会いの実話です。読んでください。

晴天の早朝、朝はまだ涼しいのですが、なにしろ40分の登りですから汗をかきます。 カオルちゃんは、登りきったところで自転車からおりてストレッチ運動を始めました。 気がついたらカオルちゃんの近くに四羽のカラスがとんできておりました。 そしてどのカラスもカァーカァーと鳴いてカオルちゃんを威嚇するのです。 でも、サイクリングとストレッチングで気持ちの良い朝を楽しんでいる カオルちゃんですから、カラスがうるさくても気分は爽快だったのです。 だからカオルちゃんは気分が良いまま、カァーカァーとうるさいカラスどもに向かって声をかけたのでした。
「おはよう、おはよう」
こう言って、カオルちゃんは優しい眼差しで四羽のカラスに目を向けました。 きっとカラスたちに向かって無意識に声をかけていたのですね。 そして突然、カオルちゃんは不思議な感覚にとらわれました。 気がついたら、四羽のうちの一羽がカオルちゃんに向かって「オハヨウ」と返したではありませんか。
「えっ、今なんて言ったの?」、カオルちゃんは耳を疑いました。
「確か『オハヨウ』っていわなかった?」
そこでカオルちゃんはもう一度言いました。
「カラスさん、おはよう!」
そうしたら、その一羽がもう一度応えたのです。
「オハヨウ」

晴天の朝、カオルちゃんはカラスとこんな体験をしたのです。 こんな体験をすれば誰だって嬉しくてなりますね。 だからカオルちゃんは、この喜びをみんなに伝えました。 「これからも同じカラスと出会えるといいね、、」 カオルちゃんが受けた感動を、僕は自分のことのように喜んでおりました。

でも、その後も毎朝おなじ時間帯に同じ場所を走ってはいるのですが、 カオルちゃんがカラスと出会うことはありませんでした。 「そうか、一度だけの出来事だったんだ」
カオルちゃんは、そう思って自分で納得してはいたのですが、 でも又あえるかもしれない、、そんな気持ちを捨てることはしませんでした。

そして、あれから一週間たった今朝、 カオルちゃんはこの間と同じ時間に同じ道を走って、同じ坂を登り切りました。 そこでカオルちゃんは四羽のカラスと出会ったのですが、同じカラスかどうかはわかりません。 同じカラスだったらいいな、と思うカオルちゃんの気持ちが込められた手紙が今朝おくられてきました。 次がそうです。

 カラスと「おはよう」と会話してから後、毎日のように自転車に 乗っているけれど、お目にかかれなかったり、居ててもただ、 カァーカァーと鳴くばかり。あの出来事は何だったのだろ うかと、不思議に思っていました。人間様のものさしで、あの 奇跡をもう一度なんて念じてみるのだけれど、進展と呼べる出来事は なかったここ数日でした。
 ところが今日、いつものところでカラスが電線に止まってい るではありませんか。期待半分くらいで「おはよう」と声をかけて みました。でも、やっぱりカラスはそっぽを向いてカァーカァーと 鳴くばかり。なあんだ、つまらない・・・あのときの交流はも う二度ともてないのかな。でも、すぐに気を取り直して、まあ いいや一回でもあんなすばらしい交歓ができたのだからと思い 直して、ずんずん山道を登って行ったの。
 坂道を登りきって、さあそろそろ折り返そうと思ってペダル を踏んでいると、背後から4羽のカラスがやって来て、前方にある大きな もみの木の枝に止まったの。あの四羽かな、そうだった らいいな、と漠然と思いながら、その木の下を通り過ぎた。でも、 ひょっとしたらこの間のカラスたちかもしれない、ふっとそう思った 私はやっぱり声をかけようと思って、挨拶したよ。 「おはよう、おはよう」ってね。
そうして、何だかここで走るのをやめるともったいないような気がして (何がもったいないのか分からないけど)、もっと先まで行きたい欲求に駆られて 「もうちょっと行ってみよう」と、ペダルを踏みつづけたの。するとまたま た背後から4羽のカラスが私の頭を越えて、私の行こうとする方 向へ羽ばたきだした。こうなってくると、「ついておいで」っ て言ってるみたいで、なんだかとても楽しくなってきた。常念 岳がきれいに見えるところまで今日は行こう。目的地は決まっ た。息が切れる。でも、もう少しもう少し。
   そして、やっと到着!  自転車から降りて、軽くストレッチを始めた。  「カラスはどこへ行ったかな?」 白いガードレールからひょいと眼下を見やるとダムの堰堤が見 えた。あらっ?なんだろう。そこにカラスが止まっていた。それも6 羽。なんだか楽しそうに会話している。 それを見ていると、また私もうれしくなってきた。だって、こ こに私が来て、こうやってカラスたちを見るのを彼らは分かっ ていたのかもしれないな、なんて考えたから。  カラスたちに私の行動を予まれているのでは?・・・と思うと楽しいでし ょう。まあ、この堰堤のからすが私についてきたカラスとは 断定できないんだけれどね。だって、あっちこっちにカァーカァー いるんだもん。でも、自分ではあの時のカラス達だったらいいなあ って思っているの。  おもしろいもので、後ろ髪引かれるというか、そんな気持ち で彼らにお別れの挨拶。「それじゃあね、ばいばーい」、と声をか けて、一気に山道を下ってきたのでした。爽快な気分。貴方から いただいたSTPのジャケットが風でびょんびょん鳴っていたよ。  その音をきいて、カラスたちは何を思っていたかな?  明日も、その次の日も、彼らの反応がどうであろうと、ずっ と声をかけることにするよ。 カオル

2002 8月23日

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