ボスは迷文家シリーズ |
無公害を目指す新世紀の電気
水素燃料電池の開発
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歴史の中で、石油燃料が普及した期間はごく短い。木炭から石炭、そしてさらには石油へと燃料技術は進化してきた。ここで今まさに石油から新世紀の燃料へと技術が移行しはじめている。その中でも最も注目されているものが水素である。カリフォルニア州サクラメント市に、Cal Fuel Cell Partnershipを訪ねて、燃料電池が自動車に応用されている実験現場を取材してきた。
燃料電池開発に取り組む裏には、大きく分けて二つの問題がある。環境問題と石油の枯渇だ。石油や石炭の燃焼が、二酸化炭素を大量に排出し、地球の温暖化の大きな原因となっていることは周知の事実である。よってゼロ・エミッション、即、無公害の燃料が求められている点がそのひとつ。そして二つ目に、原油資源枯渇があげられている。石油の実権を握るアラブ諸国のエゴが如何に働こうと、30年後の地球からは原油が枯渇すると予想されている。燃料依存社会が肥大化した今、製造が容易な水素燃料電池の開発が急がれているのである。
水素による燃料電池とは、水素と酸素を化学反応させて発電をする電力源装置をさす。それは石炭や石油を燃焼させる方法と異なり二酸化炭素を産みださない。水素は、メタノール、天然ガス、LPG,ブタンガスなどを変質させたり、水を電気分解して作り出すことも可能だが、現段階では純水素の供給を受ける方法、もしくはメタノール変質による水素を、燃料電池のスタックを通して発電させることが燃料電池の基本概念である。
燃料電池は、発電所から送られた電気に頼る充電電池と一線を画している。充電に最低でも8時間かかる電気自動車EV(Electric Vehicle)と比較して、燃料電池自動車FCV(Fuel Cell Vehicle)は、ガソリンを供給するようにして水素燃料を「給油」すれば良いだけなので、消費者にとっては馴染みやすい。
燃料電池技術に関しては、現段階ではカナダのバラードパワーシステムズ社が開発したものが主流である。「燃料電池業界のインテルになる」ことを目標に、バラード社では既にスイスの住宅地向けに大型の発電システムを出荷し始めた。松下電工向けには、卓上ガスコンロ用のブタンガス・カートリッジを燃料に使う家庭用発電機に搭載する電池スタックも出荷した。次に述べる各自動車メーカーの実験車にも同社の電池スタックが搭載されている。
今回訪れたカリフォルニア燃料電池パートナーシップ(California Fuel Cell Partnership)は、昨年の11月に州政府所在地に結成されたばかりだ。メンバーは大手自動車メーカー他、石油供給会社、そして水素技術各会社である。その中でもイニシアティブをもち積極的に動いている団体が、ダイムラークライスラー、フォード自動車、そして前述のバラードパワーシステムズ社である。日本の大手自動車メーカーも参加している。ホンダ、ニッサン、そしてトヨタの各社が、独自の技術を使って開発した水素燃料の試作車をもちよってテストデータを集めているところだ。
カリフォルニア州では、年間販売台数が3万5000台以上の自動車メーカーに対し、販売台数の10%を無公害車とすることを義務づけた。実施は2003年だ。社会整備を含めて、州政府も大きく関わらなければ水素燃料の普及は難しい。フォード自動車とダイムラークライスラー社は、消費者に対してPR活動を積極的に行っている。いくら州政府が無公害車の販売を義務づけたところで、消費者が見向きもしなければ、このプロジェクトは成功しないからだ。
フォード自動車には試作実験車が二台ある。P2000とFOCUSのFCV (Fuel Cell Vehicle=燃料電池車)。取材時に、これら二台の実験車のテスト運転をさせてもらった。アクセルを踏んだ感じは従来の内燃機関車と変わらず、出足にも不満は感じられなかった。しかし、高速になった時の伸びに力なさが感じられたが、これは自動車メーカーというよりも燃料電池の限界であるようだ。ホンダの実験車は後部座席同乗であったが、コンピューターを満載して開発チームがデータ収集に取り組んでいる真っ最中であった。
このプロジェクトの成功を握る鍵は、消費者が初期モデルFCVを購入した時、従来車と比較して満足できるか否かにかかっている。それは車の性能の問題のみならず、インフラにも及ぶものである。水素燃料の給油ステーションが消費者にとって便利なロケーションに置かれるか否か、FCVを買ったは良いが、燃料供給へのアクセスが悪ければ、不満の声は高まるばかりであろう。更には発売当初は価格も高めになるので、満足度が従来車との比較で勝らずとも下ではならないのだ。社会整備の目的で石油供給会社も参加してまでの大掛かりなプロジェクトではあるが、2003年の実施までに解決しなければならない問題は山ほどある。しかし、現実には、米政府もガソリン自動車の将来的廃止に向かって、環境庁が水素プログラムを組んでいる。石油が枯渇すれば、ガソリン自動車も乗れないのである。消費者の理解と積極的なサポートが求められているプロジェクトである。
小野沢昭志
12/28/00
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