ボスは迷文家シリーズ

職住"遊"隣接環境のシアトル


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シアトルはアメリカ太平洋岸北西部北緯47度に位置する北の街だ。最近ではイチローで騒がれていて日本でも知名度を上げたが、花札賭博の任天堂がマリナーズのオーナーになる前は、「シアトルって何処?」、「ワシントン州ってホワイトハウスがあるところ?」、といった程度でしか知られていない町だった。イチロー人気前のシアトルは林業と漁業の町。マイクロソフト、ボーイング、そしてアマゾン・ドット・コムなどでも地名度を上げてきてはいた。そこにイチローだ。はっきりといって、シアトルに30年もの長い間なじんできているボクにしてみれば、イチロー人気だけでシアトルをみつめられても戸惑うだけなのである。ボクがシアトルに移った魅力は、大都会でありながらアウトドア活動が職住に隣接している大自然へのアクセスの良さにあった。


2001年7月8日は: 昼休み:インターン女子大生(留学生)麻衣子との10kmの インラインスケート(ローラーブレード) 夕方5時: 麻衣子と 30kmの自転車 その後で独走で、 32kmの自転車 月曜日の仕事の合間に人間エンジンだけで72kmを走るんだから 事務所隣接トレールでインラインスケートをする麻衣子

7月21日: 独りで走る帰路の16kmは、7人組のロードライダー(自転車)に追いかけられた。こちらは追いつかれまいとしてスピードアップ、時速50kmまであげて約5km走りきって、彼等に抜かさせなかった。その後、会話をしながら32kmのスピードで仲良しライド。7人のライダーの中では最年少が50歳。ナンやナンや、みんな我輩と同世代ではないか。俺が出会うアメリカ人は誰もみんな健康管理がしっかりしていて強いのう。それに比べて東京の同胞たちときたら、東京の同胞でなくとも、シアトルの東京レストランに集まる同胞も、、、「身体をお大事に!」なんていいつつ、なんてことはない「身体に負担をかけるのはやめましょう!」というのが彼等にとっての健康管理で、それも喫煙者からこんな言葉が出る始末なのだ。まあ夫々の人生なのでどうでもいいことなんだけど、「身体に負担をかけない」ことが健康管理と信じて疑わない人たちからそんな風に言われる度にどことなく納得がいかないのである。

インターンのMaikoを毎日の運動にかり出しているボスのボクは、彼女のインターンをボクに世話してきた日本人(54歳)と顔をあわす度に、「そんなに運動をさせるのは無茶や、、やめときい、、」と、関西弁で20分くらいの長い説教を二度ほどきかされた。そのオッサンは冴えない青白どす黒顔、、極めて不健康なイメージだ。ボクが、これだけの運動をすることが常識を逸していると信じて疑わない人も多くいるのである。でも、それを言う人の殆どが軽い運動すらやらない人ばかりである点が面白い。

麻衣子は、ボスボクから、「どうだ、仕事を切り上げて、すぐに事務所裏でこんなに素晴らしい環境の中で自転車に乗ったりインラインをやったり、いいだろう? 景色は目に優しいし、空気もワイルド・フラワーの甘い香りで嬉しい」と、「いいだろう」の押し売りをされている。彼女は「ハイ」と返事をしているのだから、愉しんでいるに違いない、と信じているのだが、青白顔オッサンからトクトクと説教されると自信がなくなってしまう。 「運動させるのは無茶や」、オッサンは麻衣子が「No」と言えない性格だから、仕方なしに「ハイ」と応えているのだと言うのだ。

ボクのところにくるアルバイト留学生は、仕事そっちのけで自転車を「強制?」させられているのだから大変なのかもしれない。四年前の伸治には、彼が自転車乗りでもなっかったのに、卒業記念といって自転車アメリカ横断をさせてしまった。三年前の信也はサンホアン島一周。ボクの会社は仕事よりもアソビを優先しているので儲からない。ビジネスの目的は儲けなのだが、マブタにお金しか見えない人生は、余りにも寒すぎてボクには駄目なのです。

麻衣子にしてもそうだが、こちらに住む殆どの日本人がシアトルの本当の素晴らしさを知らないで、ただただ風光明媚な土地としか理解していないことが多い。ボクにいわせればシアトルとは自然とインターフェイスして感動する町なのだ。自然との触れ合いを身をもって感じてきたボクだからいえるのかもしれないが、カスケードの尾根をマウンテンバイクで縦走する僕の真横を大鷲が同じスピードで滑空してくれた時の感動、オルカがボクの乗る船の下をくぐった際に視線があった時の感動。立ちションしている時に、森の中で突然鹿と出合って互いに見つめあって動かなくなった時の複雑な感動、マウンテンバイクで熊にぶつかった時のオドロキ、クーガー(ピューマ)との出会い、狼の美しい姿、、自宅に入ってくるリスやアライグマ、裏庭を訪れる鹿、庭の木にとまる白頭鷲、キッチンの窓辺にやってくるハミングバード。麻衣子だけではないが、何年シアトルに住んでいようと、こうした自然との出会いがあることすら知らない日本人ばかりが多い。麻衣子はシアトルに4年住んでいるが、ウサギやスカンクは初めての体験だといった。彼女はそれらの小動物を毎日のようにローラーブレード中にトレールで出会っている。自転車中に彼女はやはり初めて白頭鷲を目にしている。こんな体験を5時に仕事を終えたあとにすることができるのだ。シアトルとは職住に隣接した自然が素晴らしい町なのである。

毎週火曜か木曜はボクとシャンとのロードバイク・デートである。彼女は世界選手権で三つの金メダルを獲得した自転車選手。今年もメキシコとマレーシアで開催されるワールドカップへの、アメリカ選抜チームのメンバー入りを果たした。夏になると試合でシアトルを離れる事が多いが、時間をやりくりして週一回はランチタイムに二人で32キロの距離を走る。先週、コロラドで二位銀メダルをとった彼女は、今週末シアトルで全米チャンピオンシップだ。明日の木曜日にランチタイムライドをやろうと電話があった。

自転車三昧の人生を求めてシアトルにやってきた結果、
今では思い通りの生活をしている。東京でローロバイク通勤
をしていた70年代にはただの憧れであったが、何を憧れても
行動が憧れに先んじるくらいの性格だったから実現してしまっ        毎日新聞社発行 USA NOWで紹介された
たのであろう。毎夕5時になるとジャージーに身をつつみ、              シアトルの自転車生活環境
トレールを走る。こんなライフスタイルが許されるのはシアトル
ならではのことなのだ。

おのざわショージ

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