ボスは迷文家シリーズ

ロシア人ピアニストとの夕食
北方領土をいつ返還してくれるのかいな?


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夕べは、金髪ロシア人の女性ピアニスト(36歳)マリーナと食事。彼女は三年前にニュージーランドへ 移住したが、ピアノの仕事でサンバレーにしばらく滞在中。そんな中、時間をとってシアトル入りをした のであった。べッツイーの友人の証券会社オーナー宅土曜夜のパーティーでの演奏の為に特別だ。まあ、 長い話を短くすると、昨夜は僕もいれて藤寿司で御食事をしたというわけ。英語を上手くしゃべれないの だがとても面白い会話をすることとなった。結果、気があって日曜の晩にベッツィーの家で僕らは特別 小パーティーをすることとなった。 かなり知れ渡ったクラッシック・ピアニストの彼女にブルーズを弾かせて僕のチョー怒下手ギターと ハーモニカがあわせる、というのだからこんな乱暴はあったものではないが、「I like blues」という ロシア女はおもしろい。このことをハーモニカのリーに今日伝えたら呆れ返っていた。

彼女の名前はマリーナ・ダニロバ。なんとロシア人みたいな名前なんだろうか、と, 僕はコメントをしつつ, 彼女をたまげさせてしまった。僕からの挨拶はなんと「ところで北方領土はいつ返還してくれるんかいな?」であった。常に日本の利益を考えている私目でありますから当然のことといえば当然でした。 もちろん僕はジョーダンだったのだけど僕の顔はマジ。 彼女は、返す言葉にこまり、「今はニュージーランド だから何ともいえないわ」と上手く逃げた。おぬしなかなかやるわいな、と思いつつ、「君はホンマに ロシア人なのか?」「それではテストをしてみよう」「1917年10月17日は何の日だったか?  貴女のロシア人度のテストですぞ」。彼女は堂々とこたえた「10月革命の日!」、「あたり!」、 「嬉しい!」となんとも奇妙なやり取りとなった。こういうことを会話の話題にしてはならないことは もとより冗談なんて尚いけないとされている。それが国際マナーなのだが、ベッツィーは僕がそれを うまくやることを知っている。

僕の悪ノリは更に続いた。「日本は日露戦争では勝ったんだからね、 その点しっかりと忘れないでね」。そこに普段から無口のジムが口をはさむ。「日露戦争の頃は 帝政ロシアが内戦中。日本との戦いに集中できなかったんだよ」、「それを言うなって、日本の歴史 教科書はそんな真実を知らせずに日本は大国ロシアをこらしめたと教えられていい気になっとんじゃから」。 マリーナは横でクスクスと笑ってる。そこでべッツイーが口を挟んだ、「えっ、日本はこのアメリカを攻撃 しただけでなく、ロシアともやったの?」。なんだか知らないけれど、日本が戦争好きの趣になってきた。 マリーナはまだクスクスだ。キワメテPolitically Incorrectなジョークばかりだったのだが、最後に 僕は「シベリアでは牛肉ばかり食ってるんだってね。僕のオジサンがシベリアで捕虜になっとたんよ」 と止めを刺した。 オジサンはそのトラウマを引きずって牛肉が嫌いになってしまった。おかげで狂牛病の心配はないんだけど、 この問題が出る前に死んじゃったから、まっイイカ、、、。タッチーな話題はこんなちょこでしめた。

冗談はともかくとして、僕は彼女に普段知り得ないことを質問した。例えばロシア人は共産主義を本当に 信じていたのか?とかアメリカのことをどう思っていたのか?そんな質問だ。彼女は言った。共産主義で いう平等とは、権力を持つ者達からの被抑圧者への平等搾取であって、共産党員だけが 利益を得ることができるもの。労働者たちは彼等から搾取され続けるだけ。マルクスが指摘した有産者階級 としてのブルジョアジーという搾取階級が官僚エリートにとって代えられただけで、 一般労働者が搾取されることには変わりがない。 だから人々は懸命に勉強をしてスポーツ、音楽、学問の分野で抑圧された階級から出ようとする。 そうして彼女の両親は貯金をなげうってピアノを習わせてくれた、と説明してくれた。

共産主義は幻想でしかない。それは世界のどこの国でも共産主義が崩壊したことを考えればわかることだ、 とマリーナは説明してくれた。北朝鮮とキューバだけが共産主義体制を貫いているけれど、北鮮では 権力者たちが国民と国の利益を考えずに自分たちの立場だけを守ろうとしているからで、その為に国民は 苦しんでいる。しかしそれも今となっては時間の問題であろう、と彼女は続けた。キューバの場合は 策尽きて政権と国内安定の為に続けているだけとの説明だった。

ソ連政府は、貧困に喘いでいるのに軍事予算を多くとっていた。 アメリカ帝国主義がソ連を侵略する、という妄想を国民に抱かせることによって国民を納得 させていた。これは初耳であったが、納得できることであった。

こんな会話をしているところに藤レストランのオーナーの奥さんがやってきた。彼女は上海出身の中国人 である。僕は、何だよ共産主義国女同盟でもつくろうってのかい?とジョウダンのかまえ。君もマルクス 主義者だったなあ。しかし彼女はカワスことが上手、「マルクスなんて言葉、私わすれてましたわ」 そんな感じだった。そこで彼女に質問、「なぜ、共産主義体制はうまくいかないのか?」。この女将は 頭がきれる。ハゲの寿司職人の女房にはもったいない。答は明確だった、「それは小野沢さん、一部の エリートたちが権力を握っていいようにするからでしょう。標語は立派なことを言って支持を得ている けれど江青がいい例よ。カンボジアのポルポトだってそう、アフガニスタンのタリバンだって同じような ものよ」。僕は返した「キューバのカストロはそうでないぞ」。そこへマリーナが口をはさんだ。 「キューバはソ連が”身勝手”に崩壊してから経済がたちゆかなくなった」

キューバは面白いところだ。アメリカと国交がない。しかしクワンタナモには米軍基地があり、今では 米ドルが流通している。アメリカからの観光客が落としていくドル札だけが唯一の収入源。そこへきての テロ事件。観光客の数が減って、食料も不足してきた。そんな国を助けているのがアメリカからの 救援物資。これを見てわかるように、右だとか左だとかのイデオロギーの時代は終わっているんだよね。 誰でもそれに気がついている。キューバ人もそうだ。しかし北朝鮮だけが不可解だ。あの独裁者がいる限り あの国の解放も難しいだろう。キューバは高齢のカストロ将軍が終わればアメリカ化する筈だ。すると 残るは北朝鮮と理想論に酔い続ける日本共産党くらいなもんか。東京に住む日本共産党の党員が言っていた。 党の幹部などに時代の流れや流行を理解している人がいないので吃驚させられる。早い話がビートルズを 知らないで生きているようなもので、そうなると国民の情操を捉える上で現実感がないということと同じ だ。そんな人に社会現場で適切な仕事ができるわけがない。理想や観念の世界に埋没して一般の流れを 馬鹿にしているとそうなるのだ。その点、僕は、自慢ではないが、高校時代から遊びほけていた 駄目生徒だったので現実感だけは強い、とは余談だが、昨夜、藤寿司で 旧ソ連人と旧毛沢東の子を交えてこんな会話がありました。マリーナが最後に言ったことが興味深かった のでシェアーします。学生時代には自由が許されなかったけれど、音楽を続けるかぎり彼女の精神に は自由があった。統制社会で抑圧されていた人間でなければ言うことができない言葉であった。

僕らはその後は和気あいあい、、今晩、彼女はスージーとエリックの邸宅で行われるパーティーで 演奏するが、明日の晩はBetsyの家で僕とbluesのジャムをやる。 彼女がクラッシックピアノでブルースを弾いて僕がハーモニカとギターをやるということになったのだが、 彼女は僕がどれくらい下手か知らないでいる。まあ、楽しきゃいいんだけど、俺もロシアのピアニストを 相手にちょっとズーずーしかったかな。

べッツイーとは何者か?
今の彼女はフランス人と離婚してシアトル沖の島のウォーターフロントに住んでます。 モレてしまったものの、Betsyは80年冬季オリンピックを目指したダウンヒルスキー選手だった。 その時の全米女子オリンピックチーム監督のミッシェル(フランス人オリンピック選手)と結婚し、高級 リゾート地として名高いサンバレーの古いフランス料理店を二人で買った。そして、その後ガンバって その店を成功させた。この店はもともとヘミングウェイなどが客としてきていた由緒あるレストラン。 新オーナーの二人がもつスキー界での知名度も手伝って、店には上質客が増えるようになった。 彼らはそんな人と知り合うようになって、友人となった人たちにはパーソナルなスキーコーチなども はじめたのです。ベッツイーが親しくなった人にはイーストウッドの奥さん、シュワルツネーガー の奥さん、飲み仲間にブルースウイルスなどがいました。彼女は大学院をでてしばらくスキーコーチを やったが、自転車レースに転向して、84年オリンピックを目指しもした。でもまたもやもれた。 簡単にいうとこんな感じ。

小野沢昭志
2001年12月15日

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