ボスは迷文家シリーズ |
日本貿易振興会(ジェトロJETRO)の役割は終わったか?
Japan External Trade Organization、エクスターナルとは"外"、即、輸出入を含めた貿易をさす。ジェトロは貿易の振興を旗印に発足した通産省傘下のファンクションのひとつだ。高度成長期終焉までは、日本と海外との通商を振興してきた。それは誰もが認める事実といえよう。ところが、大手企業の輸出のみが残って、中小メーカーからの輸出がほぼ壊滅してしまった今日に至っては、旧来の役割は終わったといっても過言ではなかろう。
貿易振興という行為には何が含まれるのであろうか? 言葉の意味からすれば、貿易を振興する為のいっさいの行為と言えよう。世界の主要都市に事務所を持つジェトロは、日本製品に対する信用がなかった時代には、見本市などを開催して日本製品の紹介をし、情報収集をして関連企業に商売のチャンスがあることを知らせたり、売り手と買い手を結び付ける仕事をメインとしていた。この他には、現地案内も大切な役割の一つであった様だ。海外事情に疎いメーカーの為に、目耳口そして脚となって地球を駆け回った。メーカーにとって、ジェトロ駐在員の存在は、天の助けに等しかった筈だ。それだけにジェトロの存在感も大きかった。然し、そういった時代は十年も前には過去のものとなっている。今後、時勢の変化に対応せずに、旧態前とした仕事を続けていく限り、ジェトロに将来はない。
1970年代の中頃からは、メーカーも外国語に長けた社員を雇う様になり、70年代の後半から80年の末までにかけては、海外に事務所や工場の進出をするまでになった。変化していく経済環境に生き残ろうとするメーカーは、進出先の事情に通じる様になり、ジェトロによる現地の案内や遅れぎみの情報は必要としなくなった。本来ならば、為替の動きや経済構造の変化に沿ってジェトロも仕事内容を変えていかなければならなかった。その意味で同様な役割を果たしていた商社の場合は、口銭稼ぎそして通訳・案内人の業務から、物流そして金融の業務へとその姿を大きく変えていった。現実に、メーカーの方が現地に密着しているので、商社マンやジェトロの駐在員たちよりも情報量、言葉、勝手の上で長けていることが多い。それを見極めたからか、商社は金融力と物流力を武器に、次々と子会社やベンチャー企業の育成をはかってきた。ここに、自力で生き残っていかなければならない商社と、親方日の丸の下で存続の危機感をもたなかったジェトロとの間の違いが露呈された。ジェトロは時代の変遷に取り残されてしまったのだ。
商社の多くは、従来の役割を失った時にはその形態も変えていったのだが、ジェトロの場合、変化する経済環境のなかでその形を変えることもせずに、未だ情報収集とかの、形だけの役立たずの仕事に専念してきた。ジェトロが収集した情報は、刊行物となってリリースされることが極めて遅く、手元に届けられた時には利用価値を逸していることばかり。担当者たちは、一年に一度ほどの割合で主要都市を廻ったり(実際には観光半分)もしている様だが、日本企業の現地事務所の訪問をして、そこで"また聞き"の情報を得た上で報告をまとめているにすぎない。そしてその報告が配布されるのが半年後というわけだ。過去に、僕の事務所にも三度ほどジェトロのニューヨーク事務所から訪問を受けたことがあるが、どの担当者もみな同じであった。
今年の十二月中旬にもジェトロ・ニューヨーク事務所の担当者からの訪問を受けた。行革の煽りを受けて、かなりの部門が閉鎖されているということだ。この担当者の自転車部門も行革の対象となり閉鎖がきまった。そして彼は帰国をすることとなった。今回はその挨拶回り。国民の税金を使って挨拶回りもあるまいに、と僕は思った。日本からの自転車の輸出は八十年代で終わっているし、部品の輸出ではジェトロよりも現地に精通している大手の島野工業の他に数社のみを残すだけとなってしまっている。八十年代の前半には、日本からの輸出がなくなるということは予測できていた。にも関わらず、ジェトロはその後十年以上もの間、役割を喪失したまま操業を継続してきた。これが自転車のみならず、全てのセクションに当てはまるであろうことは、日本の経済構造の変遷を知る者ならば誰にでも想像がつく。唯一生き残れるであろう自動車、家電、精密機械、半導体にしたところで、メーカーの方が情報収集力の上でも機動力の上でも、ジェトロに勝っているであろうことくらいは誰にでも察しがつく。
ニューヨークからの担当者が言っていた、ジェトロはこれから輸入を、、、。時代錯誤も甚だしい。輸入可能な品目は、商社がジェトロよりも血眼になって捜し求めているし、海外企業の日本現地法人化にしても商社の金融で次々に進んでいる。今更ジェトロが入り込むには十数年遅い。そんなことよりも、何をやったらこれからの日本が飯をくっていけるのか、といった点を貿易の面から探っていくことではなかろうか。輸出がだめだから輸入そして内需を拡大、といったところで、ここまで肥大化した消費王国日本に、これ以上どんな消費が必要であるというのか。日本は世界のどの国と比較しても無駄な消費が多い国だ。意識ある日本人ならば誰でも心痛めている。然し、輸入増進をして内需の拡大に!といった考えが、政府やメディアそして有識者の間に蔓延していることが恐ろしい。余りにも短絡的すぎるのではないか。産業経済構造の変革の中で、資源を輸入に頼ろうということならばまだしも、ただ単に輸入を増やせば道が開けるというのでは、何をや云わんかである。
ジェトロが生き残ろうとする為には、何をしたら日本に新しい輸出産業を育成できるのか、といったことを探るべきである。存在意義を高々と掲げることも出来る筈だ。然しそれが出来ないのならば、自分たちの役割が必要とされる時代は終わったという事実を潔く認めて、今すぐにでも解体すべきではなかろうか。国民は無駄飯を食わせる為に税金を納めているのではないのだ。
12/23/97