ボスは迷文家シリーズ |
文学や音楽において過度の意訳は誤訳でなく一つの作品?
英語から日本語の翻訳で、直訳をせずに自然な日本語になる様に訳すことは大切なこと。これを意訳といい、その方が真意も伝わりやすい。ところが、意訳が過ぎて訳文が原文の内容から大きく離れることがある。真意は伝わらない。それを誤訳とするか、全く異なる作品として認めるかの是非は意見の分かれるところだが、マーケティング上、原作と翻訳書は二つの異なった商品であるとラショナライズすることはできる。意訳の正当化が可能なのだ。
ビートルズの"Norwegian Wood"をレコード会社は"ノルウェーの森"として商品化。小説家村上春樹氏の代表作も同名のタイトルを引き継いでいる。口語の英語で"森"は、複数形をとり"WOODS"となる。大方の場合単数形の"WOOD"は木や薪を意味する。曲の一番目のフレーズでは"ノルウエーの木の香りが何ともいえない、"と解釈すべきところだが、二番目では"、、火をつけた、"とあり、その後に"Norwegian Woodの香りがとてもいい"となっているので、"彼女の部屋に招かれた時には、暖炉に火がともっており、その香りがなんともいえなかった"と解釈することもできるところだが、"ノルウェーの森に建っている家なのでその香りがかぐわしかった"と解釈することもできる。でも二番目のフレーズを読む限り、"Norwegian Wood"とは、寒い冬の日に赤々と燃える暖炉の薪木のように思えてならない。であり乍ら彼女が目の前からいなくなると"This bird has flown(鳥は飛び立っていった)"とリリックは進むので、"森"と解釈すべきでもある。どちらの意味にとれる様に書かれているのだ。簡潔に云えば、この曲は一つのファンタジー。従って、"WOOD"を"森"と訳した時、これは意訳でも直訳でもない、と言うことができる。しかし現実には時代背景にはLSDとマリファナがあり、当時のビートルズは薬で冒されていた。その影響でリリックが意味をなさない、というのがアメリカ人の見方だ。その背景を考慮にいれずに、日本でノルウェーの森をどう訳すべきが喧喧諤諤あったのだから、ちょっと可笑しい。
多くの曲がそうである様に、歌のリリックには文として成立しないものが多い。そういった意味で、この曲を"ノルウェーの森"とした訳者は、どこまで英語を理解した上でこの様に訳したのか、気になるところである。
Norwegian Wood (This bird has flown)
I once had a girl, or should I say she once had me.
She showed me her room, Isn't it good, Norwegian wood?
She asked me to stay and she told me to sit anywhere.
So I looked around and I noticed there wasn't a chair.
When I awoke, I was a lone, this bird had flown.
So I lit a fire, isn't it good Norwegian wood?
11/24/97