ボスは迷文家シリーズ |
頻発する詐欺に注意
WorldInsideNewsから
アメリカは犯罪先進国。ありとあらゆる事件が日常茶飯事に起きている。しかし、銃をつかった 事件など凶悪事件があまりにも目立ちすぎるので、寸借詐欺的な事件などはあまり表沙汰にならない。 犯罪としてのプライオリティーも低いのだ。寸借詐欺にあうことは、蚊に刺された程度でしかないの だろうか。
経理担当の社員が泣きそうな顔で私のところへやってきて言った。「小野沢さん、電話料金を 大至急払えと強く言われているんです。もう私はどう応えたらよいのかわかりません」 彼女は 続けて言った。「一月ほど前に、小野沢さんから、明細がないのだから支払う必要はないと言 われていた件です」
私は受話器を耳にあてた。先方の言い分は、スプリントという大手長距離電話会社に対して 六百ドルの支払漏れがあって、それが最近判明した。期限がすぎているので大至急支払うように、 という内容であった。前回の電話の時に調べたが漏れは見つからなかった、と説明。それに対し 相手は、そうでなくスプリントが明細に入れるのをミスしてしまったものだ、と切り返してくる。
私はそれならばスプリントが謝罪の手紙を添えて請求してくるのが筋だろう、と対応。それに対し、 その分の取りたてを我が社に依頼してきたのだ、と食い下がってくる。それならば、コピーでもよい から明細を送れと応え、話していても時間の無駄だと言って、私のほうから電話をきった。
この時点で私は、これは詐欺事件だとの確信をもった。当社の経理の担当者が小切手まで用意した ように、支払漏れという言葉に反応し、すぐに支払ってしまう人達が多くいるのだろう。特に、 議論を英語で進めることのできないような人達は、キツネにでもつままれた気分で支払ってしまう に違いない。正に当社の経理の女性がそうであった。アメリカ人でも、誠意の人そして脅しに弱い 人達は、深く考えることもせずに支払ってしまう。だからだろう、こういう詐欺事件が他にもあるのだ。
取り立て会社から再び電話があった。今度は怒っている口調だという。私は電話に出た。 回線の向こうからはドスのきいた声で、此方を威圧しようとする支払要求が聞こえてくる。 真に受けて聞いていると恐ろしいが、先方が芝居をしていると思えば逆に、そんなことをし てまで小銭を稼ごうとする人間性が悲しく思えてくる。
私の回答は簡単だった。この会話をテープに録音している。この取り立てが詐欺事件と思われるから、 ワシントン州政府の公正取引委員会に持込むつもりだ。同時にスプリント社の消費者窓口相談係に 電話をして、先方のアドバイスを求めるつもりだ、というものだった。
明細はないけでど支払いをしろ、というのは子供むけの脅しと変わることがない。しかし、 仕事が忙しくかまっていられなかったり、心理的に英語が不得手という負い目を持っていたりすると、 面倒くさいからと言ってすぐに支払ってしまうのだろう。そういった人間の弱みにつけ込んだ詐欺である。 二度目の電話をきってから既に一年も過ぎたが、この取り立て会社からは、その後何も言ってきていない。
電話で寄付を求められて、支払うと慈善団体などではなかった……。こんなことも多い。アメリカ人 のお年寄りの女性がよく引っかかる。ごみ箱からクレジットカードのコピーを拾い、メール・ オーダーに使われる事件もある。署名の必要がないからだ。名前、番号、有効期限だけでカードは アクセプトされてしまう。請求がカード所有者に届く頃は、荷物が配達された場所はもぬけの殻。 私は知らないうちに4300ドルの買い物をされてしまったことがあるが、カード会社は請求をしてきた 店との間で決着をつけたようだ。
私の会社は一般消費者相手にも商品をメール・オーダーをしている。ひと昔前までは、着払いでの 支払いに個人の小切手もアクセプトしていた。一度だけの経験だが、宅配会社のUPSが荷物と引き 換えに受けとって来た小切手が不渡りとなったことがある。何度やっても同じ結果。相手方に電話 をかけると回線は不通になっている。こちらはシアトル、相手はニューヨーク。簡単に調べに行く ことすらできない。まんまと引っ掛かってしまったといえる。
アメリカは犯罪先進国。ありとあらゆる事件が日常茶飯事に起きている。しかし、銃をつかった 事件など凶悪事件があまりにも目立ちすぎるので、寸借詐欺的な事件などはあまり表沙汰にならない。 犯罪としてのプライオリティーも低いのだ。寸借詐欺にあうことは、蚊に刺された程度でしかない。 そして、蚊に刺されるほうが悪いということになってしまう。だからか、あまり問題とはなっていない。 しかも、被害者の被害を受けたという意識のないことが多いのだ。世界中に敵を持つアメリカは、 爆弾テロ事件やドラッグの水際どめだとか銃をつかった殺人事件で手がまわらないのかもしれない。 少なくともどこの刑務所も満杯。これ以上犯罪者を捕まえても投獄する場所がないのだ。当面、 寸借詐欺からは自分で自分の身を守るほかないだろう 。
小野沢昭志 1999年10月2日
以上はWorld Inside Newsからの転載でした。
http://www.digitalx.ne.jp/win/vol10/main/index.html
おのざわショージ
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