ボスは迷文家シリーズ

煙草のけむり
くつろぎの時


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今朝のラジオ・ニュースによると、米国の大学研究機関による調査の結果、 母親受精時に男女の何れかが喫煙者であった場合、妊娠時の母親が喫煙者 又は二次喫煙者であった場合、胎児の脳の発育に情操面での悪影響を及ぼ す確立が高くあると判明したそうだ。

情操面での悪影響とは精神不安定を指すが、喫煙が多くの喫煙者たちの 一時的精神安定効果をだす麻薬効果があることを考えたら、胎児の頭脳に 悪影響を与えたとしても納得がいくことである。

煙草とは麻薬の一種である。常用反復性がある。他の麻薬との違いは、 幻想状態にはいったりトリップすることがないだけのこと。麻薬と認定するか 日常嗜好品とするかの基準がここにあるのだろ。

煙草が喫煙者、そして二次喫煙を強いられる非喫煙者のみならず、胎児に まで悪影響を及ぼすのならは、これはハッキリとした社会悪である。

社会悪を判断するものは個人個人の道徳感と正義感。ところが、日本では 世の中の善悪を説く人たちまでが、煙草の煙に悦に入り他への迷惑を考え ていない。テレビドラマのシーンにすらある。患者の相談にのりながらの医者 による喫煙。喫煙しながら生徒を叱責する教師たち。日常生活の中にも多く いる。例をあげたらキリがないくらいである。

一度恥ずかしい思いをしたことがある。12年ほど前のこと。アメリカの自転車 雑誌の編集者とともに東京に行った。アメリカ人、特に頭脳労働に携わるもの たちの喫煙は皆無だ。喫煙者たちの多くが肉体労働者たち。従って出版社につ とめる人たちの殆どが禁煙者たち。自転車雑誌だとライターやカメラマンを 含めた全てが煙草を吸わない。そんな自転車雑誌のライターとともに東京へ行った 時のこと。東京で専門誌を多く出しているある出版社を訪問した。そこの自転車雑誌の編集部 を訪れたのだった。そこで僕らはおどろいた。編集室、それでなくとも狭い編集室 が煙草の煙で充満しているではないか。僕らはお互いに顔を見合わせた。そして 編集長と対談したのだが、この編集長がチェイン・スモーカー。一本目が灰皿 に残っているのに次に火をつける。我々は草々にその場をひきあげた。煙がこびり ついた我々の衣類はホテルの部屋まで臭くした。かばんも臭くてならなかった。

アメリカの自転車見本市で自転車の仕事に携わるギョーカイ人による喫煙をみる ことはないが、会場の外に出ている喫煙者の殆どが日本人と台湾人である。5年 前までは頻繁にマウンテンバイクのレースにいったが、そこで吸っているのも日本人 ばかり。日本のレースのプロモーターや自称自転車のリーダーたちまでが喫煙して いる。別の場所から彼等をみていて、僕はアメリカの業界にどっぷりとつかっている ”日本人”であるだけに、”日本”を背負ってアメリカにきている彼等の姿が 同じ日本人として恥ずかしい。

本人にとっては煙草の煙がくつろぎの時であるかもしれないが、その他の喫煙者 を含めて二次喫煙を強いられる人々には公害の他のナニモノでもない。煙草の 紙に含まれた化学薬品の吸引を強いられている。葉巻と同様に、煙草葉の香りには 親しみのモテルものであるが、一般の煙草(紙巻き)の嫌な臭いは紙の燃焼に よるタールが原因なのだ。煙になったタールを吸えば非喫煙者の喉や肺にもタールが こびりつくのである。それを胎児や周囲にいる人々そして幼児たちが吸っている。 悪気はない、とか、あの人はそれでも良い人なんだからではすまされない。

2002年5月21日

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