ボスは迷文家シリーズ |
ストーカーは誰だ? 狂った中年オト-サン
その後、怪電話はなくなりましたでしょうか。いずれにしても、貴方のご主人が受けたような怪電話を、 次に電話主の奥さんが受けたら彼はどう思うのだろうか。更には彼が任されている会社の社員や、親会社の上司たちに、彼による怪電話に関するタレコミがあったら彼はどう感じるのだろうか。彼がどれほど否定しようが、彼の信頼は失墜するであろう。そう思うのです。こういうことは普通だったらやらないことです。しかし、怪電話がやまないようだったら、それもひとつの方法かもしれません。世の中には本当に卑劣なヤローがいるもんですね。キタネーやり方で左の頬を叩かれたら、相手には往復ビンタでやり返すことも効果的かもしれません。相手の家族と会社に電話をしてやればいいのです。その位やらないととまらないかもしれません。
「お久しぶりです。実は8月1日4:00頃、主人あてに怪電話がありました。電話内容は『お前の奥さんには男がいる。12月頃から EmailをしているXXXという男だ』という一方的なもの。当然、主人は私を問い詰めました。XXXといえば貴方です。12月頃からというのも貴方です。貴方のところにも何かありましたでしょうか? 私は貴方とお会いしたことさえないのに、この怪電話の主はいったい何を根拠にこんな電話をしてくるのか、そして何を目的としているのかを理解するのに苦しみます。私に端を発したEmailが原因なので、貴方にご迷惑がかかったりしたら申し訳ないと心配です」
こんな手紙が、顔を合わすこともないEmail交換相手のA子という女性から送られてきた。半年前に、手紙を三ヶ月弱続けただけだったのだが、手紙の中にある怪電話の主は、僕とA子が男女関係にあると断定した上で彼女のご主人にこんな電話をかけたのだ。
インターネットを通じて、メール仲間に「偏見に満ちた僕の考え方」を回覧していて、その線上にKKKという男がいた。KKKは既婚者で子供もいる。子会社とはいえ小さな会社を任されたビジネスマンだ。そんな彼はA子を不倫相手として狙ってでもいたのだろうか、KKKは僕からのメールをA子にも転送していた。参考になるから読んだらどうか、というものだったのに違いがない。彼女とKKKの関係については僕には知るよしもないが、僕のメールはKKKが彼女とコンタクトを保つ上で利用されていたことになる。
KKKがA子に転送していた僕からのメールは彼女の関心をひいた。A子はKKKから僕のEmail住所を聞き出すと、直接僕宛に手紙を書いてよこすようになった。それが昨年の12月上旬のことであった。僕は彼女に返事を書いた。そして何度かやりとりが交わされた。しかしそれも2月末までのことであった。極めて日常的な生活をしている極めて日常的な主婦が書いてくる手紙は僕にとっては極めて退屈なものであった。Emailのやりとりは自然消滅した。そしてお互いに音信不通となっていた。
しかしKKKはそうは思ってはいなかったのだろう。A子が僕にEmailを出すようになってから、彼女はKKKを避けるようになった。結果、KKKはこの僕にA子を盗られたとでも思ったのであろう。そして思い詰めて、KKKはA子を困らせるストーカーとなった。ストーキングは犯罪である。警察事件となってもおかしくはない。僕はこんな推測をもとにA子への返事の最後に、今回の怪電話の一件を警察に通報することを薦めた。
「ビックリしました。12月から僕は貴女の男になったていたのですか? それは知りませんでした。しかし嬉しいですね。男冥利につきます。でも家庭の主婦という立場にあっては、僕のように笑い飛ばすわけにはいかないでしょう。失礼しました。放っておいたらどうですか、とも言いたいけれどそんなわけにもいかないだろうし。これがきっかけとなって、どんな犯罪に発展していくかどうかもわかりません。嚇かすわけではありませんが、取り合えず警察に通報しておくことをオススメします。これは明らかに犯罪です。アメリカでしたらFBI捜査が入ってもおかしくないストーカー事件です。
怪電話の主は、僕と貴女の男女関係を想像の世界でつくりあげて、その気持ちに囚われてしまっている人に違いがありません。僕と貴女は会ったこともなければ食事をともにしたことさえないのです。ですから男女関係の現場を目撃ということもありえないし、捏造さえ根拠の揃え様がありません。ですから、貴女と僕との間の男女関係というデッチアゲ話しを創りあげることができる人は、僕と貴方がコンタクト(Email)をとったことを知っている人に限られてくるのです。それが誰であるか? 貴女も僕も知っているKKK一人となります。
もしご主人からの疑惑がとれないようでしたら、僕に直接お電話していただいても結構です。やましいことはしていないのですから、ご主人とは堂々とお話しをすることができます。」
僕は携帯の電話番号をそえてA子宛てに以上の手紙を送った。しかし、彼女のご主人からの電話はなかった。
「早速のお返事をありがとうございました。貴方から送られた手紙を主人にも読んでもらいました。いちおう納得してくれたようです。ご心配いただきましてありがとうございました。怖い人はすぐそばにもいるんだと思いました。私の家庭を破壊しようとする意図なしにはありえない電話でした。」
A子はこれ以上語らなかった。あとはシャーロックホームスを気取る僕の推理だ。しかし、この推理を僕はA子宛てに送った。僕の側にやましい気持ちがあったらできないことだった。
僕と貴女の間の男女関係を想像し、Emailの開始が12月と言い切れる人は、貴女に僕のEmailの住所を教えた彼一人しか考えられません。彼がそんな異常心理を持つ男だと考えたくはありませんが、揃えられた条件を組み立てて推理をしなくとも彼以外を犯罪者として考えることはできないのです。
僕と貴女が一度でも会ったことがあるのなら、その現場を目撃した人が想像を高めることも可能ですが、それすらないのですからね。仮に目撃されていたとしても、目撃した人には12月からのEmailを知ることはできないのです。残された可能性は貴女のEmailに入りこむことができる人ですが、僕から貴女に送ったEmailはプラス思考の話しですとか小噺ばかりで、貴女からのものは男の僕には興味がないものばかりでした。誰に読まれてもやましい内容を含んでいないものばかりです。そして我々のEmailは二月だかを最後に自然消滅しています。
僕のコンピューターのEmailは誰も入り込むことはできません。更には当方では日本語が読める人間は限られています。貴女のご主人の電話番号を知る人もいなければ、僕を恨んでも貴女を恨む人はいません。貴女を知る人がいなければ貴女を憎むことも不可能。よって推理はどうしてもKKKに行き着くのです。12月上旬に貴女が僕にEmailを送ってきたことを材料としたことで自らをバラシてしまった。そして僕の名前を知っていたことも命取りになった。怪電話をかけるとは正常な神経の人ではないですね。
この男は貴女を苦しませた上、貴女の家庭崩壊の原因を作ったのですから大きな罪を犯したことになります。当然、僕は彼を許すことができません。自分では結婚生活をしているわけです。どの程度の浮気心かしりませんが、他人の女房を執拗に追いかけるだけでなく、妄想にとらわれて貴方のご主人宛てに怪電話をするなんて、そうとう狂っていますね。異常神経者でなかったらやらないことです。普通でしたら、仮に貴女が他の男性と親しくなったことを察したならば、潔くあきらめるものです。彼はそうでなく怪電話をかけたのです。このような犯罪は通常の神経を持っている人にできることではありません。
貴女のことを慕う事は正常な神経でおこりうることです。貴女に男ができたのではないかと想像を膨らませることも正常です。しかし、これらの結果として、貴女の家庭の平和を乱すような行為に出たことは正常な神経で出きることではありません。まさに異常神経と呼ぶべきものです。仮に、貴女とKKKとの間にそういう関係があったとしても、彼は一線を超えた犯罪の真似事をしたのです。精神バランスを崩さないとありえないことです。
A子はKKKからのしつこいアプローチに嫌気がさしていたのだろう。だから彼女は彼からの誘いを断っていた。彼女がみせたそんな態度は、A子が僕と親しくなった為のものとこのストーカーは想像するに及んだ。そしてその想像を膨らませていった。想像を膨らませるまでは誰でもやることで、その場合は疲れ果てた中年男の嫉妬ですませることはできる。しかし、相手の亭主宛てに怪電話をするとなると、それを嫉妬だけで済ませるわけにはいかない。すでにストーカーとなったのだ。これ自体が犯罪である。
僕が彼らの会話の中に浮上する前に、仮にKKKが彼女と不倫関係に入ることに成功していたとしても、A子の心は12月に入ってからは彼を避けるようになったのだ。彼はそれを認めてA子のことは諦めるべきだった。どうせ中年オトーサンのセガレは役立たずなのだろうから、こんな犯罪まがいのことをしなくても良いものをと思うのだが。上野あたりのフーゾク街で済ませていてもらっていた方が全てが円く納まるというものである。。
タテ食う虫も好き好きというので僕には評価ができないが、男の僕がみても、KKKには女を魅了するセクシーさはない。顔は乾燥脂のようで、語ることは儲かったとか損したとかいうことばかり。お金のことにしか興味がないのだ。お金の力を見せつけることによって女が惹かれてくるとでも勘違いするような人間なのかもしれない。そんな男にA子が嫌気をさしてもアタリマエなのだ。だから食事に誘われても断るようになった。僕にはそんな想像がつく。
普通に生きる人だったら、彼のお金に対する亡者ぶりだけをみても嫌気がさす筈だ。お金が全てという価値観は彼をビジネスマンとしても傲慢な醜さにしているのだが、彼自身はそれに気がついてはいない。一度、彼を交えた飲み会に一人の女性を連れて行ったことがある。二度目に彼女を誘ったら、KKKが出席するのだったら厭だからといってそれ以来出席をしなくなった。この点を考えただけでもA子が彼を嫌うことは想像しやすい。
いずれにしても、彼女の亭主が受けたような怪電話を、次にKKKの奥さんが受けたら彼はどう思うのだろうか。彼が任されている会社の社員や、親会社の上司たちに、彼による怪電話に関するタレコミがあったら彼はどう感じるのだろうか。彼がどれほど否定しようが、彼の信頼は失墜するであろう。こういうことは普通だったらやらないことだ。しかし、怪電話がやまないようだったら、それもひとつの方法かもしれない。A子には、怪電話の主が誰であるか、彼女が考えることができる範囲内でKKKの名前を警察にレポートしておくことは大切だと、僕は助言しておいた。世の中には本当に卑劣なヤローがいるもんだ。キタネーやり方で左の頬を叩かれたら、相手には往復ビンタでやり返すしかない。 相手の家族と会社に電話をしてやればいい。その位しないと、被害者は一方的に被害を受けるだけでしかない。
おのざわショージ
08/10/01