ボスは迷文家シリーズ |
ワインのはなし
10ドルのワインに40ドルの味を求める
20年前にアメリカに移住した。シカゴ中心地のTimeLifeビルの28階にある三井物産 の中に事務所を借りてそこで仕事。出張が多かった。アメリカ国内線に喫煙席があった時代であった。 UAがマイレージPlusプログラムを始めたばかりの頃で、僕はすぐにメンバーとなった。今では全 エアラインをプラスして100万マイルをこえている。因みにアメリカ横断と太平洋北回りのマイレージが 3800マイルくらいである。当時はの便には喫煙席がまだあって、Non-smoking Isle Seat禁煙通路側席と 指定することがくせになっていた。アメリカ国内線では映画が5ドルで、アルコール類が3ドル。そんな 時代、僕は飛行機でワインをおぼえた。誰もがシャードネーとシャブリといって白の辛口をたんでいた。 僕もそうした。ワインの知識は全くもっていなかった。僕の日課であったらラケットボールの相手がエド。 彼は当時ワインの仕事についていた、今ではオークションの権威であるクリスティーのワインの責任者と なっているが、そんな友達を持っていた僕のワイン知識は極めてなさけないものであった。
僕とワインとの出会いは、ドイツまでさかのぼる。取引先のBrunの人たちが、ケルンで 行われたFotokinaというカメラショーが終わってから我々20人ほどの出張者たちの為に会社のバスで ワインツアーをやってくれたのだ。モーゼル川からライン川あたりのワイナリーや古城を訪問し、 たしか「黒い猫」という名がついた村のワイナリーで、その前年に金賞をとったワインを直接購入した。 品はシュぺート・レーゼという上格のもの。それが美味しいということでみんなで買った。一人あたり 6ダースから10ダース買った。社長は人に配るということで30ダースくらい買った筈だ。20人分だっ たので、コンテナ一台がつまった。輸入関税をごまかす(ほんとかよ?)為にラベルは品格が一番下級の もの、、正真正銘のラベルは別途送られてきた。通関費だとか全て含めて一本600円だったことを憶えて いる。僕は、自分の好みではなくお墨付きだからこのワインは旨いんだという感覚で飲んでいた。しかし モーゼル・ワインだったので如何せん甘かった。もちろんモーゼルが甘くて何が辛いなんて知る由もなかった。 当時の20代にそんなことがわかるわけがない。今わかったことは甘いワインを飲むと 僕は悪酔いをするということ。日本酒でもそうだ。でも当時の僕はそんなことは知らなかった。従って、 この"旨い"ワインを飲む度に悪酔いをしていた。そんな僕がアメリカに移住して、ワインのPart2に ステップインしたのであった。
シャードネーでもシャブリでも今の僕には甘すぎる。白でこれ以上の辛口があるのだろうか。そういう 知識をもたない僕は赤に切り替えた。最初はバーガンディー。何しろ名前だけは知っていたからだ。 その次にキャバネーに変えた。それがすぐにメルローに変わった。メルローのマロヤカさとドライさが好 きだった。僕が住んでいるイサコアからロードバイクで一時間行ったところに大きなワイナリーが二個所 ある。シャトー・サン・ミッシエルとコロンビア・クレストの二軒。そこのとなりにはレッドフック という地場ビールのブリュアリーもある。この辺をサイクリングしているとホップの香りが漂っていたりすること もあってなかなかいい。まあ、いずれにしても以前はサン・ミッシエルのシャードネー。そしてつい最近 まではコロンビア・クレストのメルローを飲んでいた。が、今ではバロッサ・バレーのShirazである。 これがシアトル地場のものよりも安くて旨いのだ。
デイトレーダーとして知られた日本人にHM氏がいる。僕は二度の取材を通じて彼を知ることになったの だが、僕の自宅から5分の距離にある彼のお宅に呼ばれるといつも美味しいメルローが出された。 メルロー派の僕としてはこたえられないわけだ。銘柄はリーピング・フロッグというナパ・バレーもの。 僕はかって飲んだメルローの中でこれに優るものはないと思った。しかし値段は張る。ビンボーな僕むけ ではないことを悟り、ひたすらコロンビアクレストで我慢した。
飲めたものではない代物の数は山ほどある。不味いワインにあたったら最悪だ。ワイン知らずから貰う ワインに多い。当然のことだ。お礼の言葉に困る。「とても美味しかったです、ありがとう」。こんな ことを言って次に同じワインを貰っても困るのである。ワインだけは旨い不味いがはっきりとしている といえる。
ワインを知らないオーナー夫妻が選んだ行き付けの寿司屋のワインくらい不味いものはなか った。余りにもまずいので寿司屋で赤ワインの僕は日本酒に切り替えた。しかし、それが三ヶ月続いて 気がついたことは体重が増えたということ。僕は焦ってオーナーに電話をした。「おたくの店のワインは 不味くて飲めたものではない」と言いたい気持ちを抑えて、「ワインには好みがあるから」という理由で 一般的なコロンビアクレストのメルローを置いてもらうようにした。最初は彼等もわからないので、僕が 買い出ししてきて店に納入した。やり方は二本持ち込んで、一本を店にワイン代としておいてくる。そん な方法だった。その内にこの店も 自分たちでこの銘柄を置くようにしてくれた。だから今ではワインの心配はなくなった。
ハウス・ワインは店のプライドである筈だ。一番安くだすハウスワインの味で店の味が決まるということ。 サバのシメ方で職人の腕がわかる。そんなとこだ。イタ飯屋ではハウスワインにうるさい。不味いものは 出さない、、という店の心意気だ。それが僕の行き付けの寿司屋にはなかった。寿司屋にそれを期待する方 がいけないのだろうが、やはり店としてワインを置くからには店の意気込みを選別にみせて欲しいところ だ、僕はオーナーにそれを伝えた。
20年来贔屓にしていた寿司職人のクマさんが「寿司くま」という店をやっている。過去四回ほど僕が開 いたパーティーで彼にきてもらって握ってもらったことがあった。昨年末のベッツィーの家で行われた パーティーでも彼がきて握った。クマさんは店をとじてまでして僕のパーティーにきてくれる。その彼は 店にワインをおかない。彼のとなりの店はワイン屋だ。仕入れは簡単な筈。だけど店にはワインをおかない。 「そんなにワインが飲みたけりゃ、となりで買ってきて勝手に飲みやがれ!」という感じだ。だから僕は 隣のワインショップでワインを購入の上コルクを抜いてもらい寿司カウンターにドンとおいて寿司を食う。 ワイングラスをだしてくれるからありがたい。これではこの店の売り上げにつながらないのだけれども ワインの方がいいんだから仕方がない。
昨夜、寿司クマに行ってきた。僕はワインショップで、一番安いバロッサ・バレーのShiraz(シラッズ) を買いたいと言った。安ければ安い方がいいのだ。それが僕にあっている。バロッサ・バレーはシラッズ で知られている。僕は最近バロッサのシラッズに凝っている。だからあちこちのワインショップに立ち寄 っては安い銘柄をトライしている。外れたことはない。下は6ドルから上は10ドルまで。この価格帯で 40ドルワインの味を探すのだ。40ドル払えば40ドルの味を買うことはできるが、僕は10ドルまでの 価格帯の中に40ドルの味を求める。そして夕べは大成功であった。Break Neck CreekのShiraz、これは美味 であった。気がついたら一人で一本空にしてしまった。普段は半分飲んで半分店に置いておいてもらうの に、、、。
Break Neck CreekのShirazワインが日本にも入っていたらお勧めである。この他にも、RosemontのShiraz (9ドル)が美味しかった。まだ試してはいないが、Nottage HillのShiraz(7ドル)も買い込んである。 バロッサには安くて美味しいメルローもあるそうだ。Banrock Station Cave Cliff Merlotがそれ。僕は まだこれにお目にかかっていない。Yalumba Galway Heritage ShirazそしてLeasingham のRed各種と まだまだある。すべてバロッサ・バレーに住む知り合いからの推薦である。
余談 1
ワインは10ドルで40ドルの味にあたることが多いが、日本酒はワインなのに価格なりの味しかしない。
どういうことなのだろうか。安ワインには防腐剤が入っていないが、安いだけでなく高いものにも
日本酒だったら防腐剤が入っている。それが理由だからだろうか。その点、吟醸酒はワインと同じかもし
れない。でも値がはり過ぎる。それを高いと思わない人たちは諦めているのか、リッチなのか、それが
当たり前と思って疑問を持たないだけだろう。僕は安いワインに高い味の発見が可能だということを知っ
ているだけに、日本酒は高すぎると思っている。
余談 2
僕がアメリカに移ってワインを憶えた後のこと。ある人に招かれて千葉県松戸の高級(?)レストラン
に連れて行かれた。招待してくださった方は洒落てワインでも飲もうかと言ってくださった。それで
僕はウエイトレスにワインは何があるんですか?と質問。今の日本ならば当然な質問である筈だ。しかし
ぼくはそれを1985年頃やったのだからこれがいけなかった。ウエイトレスが困惑顔で奥に引っ込んだかと
思ったらすぐマネージャーらしき男が出てきて「何があるなんて聞かれても困るんです
すよ、うちにはちゃんと赤と白はおいているんですから」とプリプリと怒っていた。これがこの高級
レストランの客扱いとワインセレクションであった。
おのざわショージ 050202